工具を語る上で切っても切り離せないのが、鍛造と鋳造、そして工具の製作方法。
なので、その工具がどうやって出来ているのかも知らないのに工具を好きだと語るのは、ラーメンの作り方を知らないのにラーメンの話をするぐらい滑稽だ。
今日はそんな工具の材質の話にしよう。
鍛造と鋳造
まず、鍛造と鋳造の基本的な違いからおさらいしておこう。
ここが分からなければ、この先の話はついてこれないから。
鍛造(たんぞう)とは
読んで字のごとく、鍛えて作る。
特殊鋼と呼ばれる炭素が含まれる鉄、例えばSCM415などのクロモリ材や、S45Cを使って形をプレス成形する。
温間鍛造と冷間鍛造があり、冷間鍛造の方が精度が出るしキレイに仕上がる。
温間鍛造は複雑な形状に向いているが、熱によって酸化皮膜が形成されるのであまり使用される事は無いだろう。
鋳造(ちゅうぞう)とは
鋳造とは、鋳型(いがた)と呼ばれる型に溶かした鉄を流し込んで作る製法の事だ。
大まかに、ネズミ鋳鉄(FC)とダクタイル鋳鉄(FCD)に分かれているが、ダクタイル鋳鉄の方が堅く、焼いて硬度を調整出来るので工具向きだろう。
実際の現物にFCとFCDのどちらが使用されているかを知りたければ、切断して組織を見たら良い。地域に試験場があれば破断して試験片を作ってもらえるので、後学の為に依頼してい見るのも良いだろう。費用は5000円でお釣りがくる程度だ。
鍛造と鋳造の使われ方
複雑な形状の工具には鋳造が使われることが多く、強度の必要な工具には鍛造が使われることが多い。
鋳造のメリットに複雑な形が作りやすいと言う事と、型代が安い(鍛造に比べれば)という事が上げられるので、ソケットでも鋳造のソケットは数多く存在する。
工具の製法としては、単に「鋳造」と書かれることもあるが、「キャスト」「ロストワックス」など様々な呼び方で呼ばれる。
焼きが入っていないとナマクラなので、安い工具の精度が悪かったり、すぐに壊れたりするのはここに起因している。
ちなみに
工具には使われないが、アルミダイキャストも鋳物の一種だ。
溶かしたアルミを高圧で金型に押し出して成形する製法で、鋳物の欠点である鋳込み作業が早く終るメリットがある。
次々に作れるので大量生産に向いているが、型代が恐ろしく高い。
表面がキレイで巣穴が少ないので、車などのミッションケースに良く使われている。
工具の当たり外れ
鍛造の工具は、比較的当たり外れが少ないが、それでも焼入れ時の窯に入る場所によってはムラが出る。
焼入れ職人が日々頭を悩ませている部分ではあるが、それでもムラは出来るし、一定の仕上がりにするのには相当大変だ。
ちょうどオーブンレンジの中のクッキーを思い浮かべてもらえば分かるだろう。キレイに並べられた手作りクッキーは、焼色を全体にムラ無く付けるのは難しい。
また、鋳物に至ってはムラが出るものとして扱ったほうが良い。
というのも、鉄を熱して溶かしているので、成分がずっと均一というのが不可能だからだ。
様々な要因が重なって出来上がるので、鋳物に品質を求めると必ず痛い目を見る事になる。
まとめ
鍛造・・・複雑な形状は難しいが、丈夫で精度も出せる。
鋳造・・・複雑な形状に向いているが、仕上がりにムラが出やすい。
今回は誰でも知っている基本的な話をさせてもらったが、次回はブローチ加工やバレル研磨などの機械加工以外の製法についても語りたいと思う。
あー、めっちゃ変な語り口調にしたせいで肩こっちゃったわ~。
また機会があれば書きたいと思います。